まずは清盛の表情に注目してほしい/平清盛 第20回「前夜の決断」

2012/05/21 ブログパーツ

平清盛 第20回「前夜の決断」レビュー


『平清盛』 登場人物/キャスト(公式サイトより)
 ↓↓↓

http://www9.nhk.or.jp/kiyomori/cast/




【今週のひとこと】

「分かったか、清盛」(後白河帝)


【あらすじ】

鳥羽院崩御。

崇徳上皇と後白河帝の対立は避けられないものとなっていた。

悪左府頼長は、その豊富な財と崇徳上皇の後ろ盾をもって、
挙兵に及ぶ画策をする。

院近臣である信西は、頼長と崇徳上皇に謀反の動きありと
見て、武士を動員していた。

平氏は、戦力を欲しがる両者の顔色をうかがい、
戦後の褒賞を釣り上げるという棟梁・清盛の策で、
いまだ態度を明らかにしない。

その清盛のもとを、信西みずからが訪れ、
後白河帝の側につくよう要請する。

恩賞としての領地や官位をうかがう清盛であったが、
信西は意外な人物を清盛に引き合わせる。

その人物とは、誰あろう後白河帝であった。

身内を引き裂き、親兄弟同士で争う保元の乱が、
いよいよ始まる……



【レビュー】


全俺が泣いた。
一大河です。



第20回「前夜の決断」はいかがでしたか?


平氏、源氏、院…保元の乱を前に交錯する各々の思惑、
そして、引き裂かれるかつての身内。

一大河は鎌田通清・正清親子のやりとりでヤラレて、
忠正叔父の優しさに胸をえぐられて、ボロ泣きして
しまいましたが、あなたはどうご覧になりましたか?

しかしながら、美味しいところは後半にもっていくのが
一大河流(?)ですので、今回のレビューもまた、
ちょっと違うポイントに力点をおきたいと思います。

タイトル通り、今回は「清盛の表情」に注目してみると、
これまたひと味ちがった視点で観られて面白いんですね。


なぜなら

清盛に潜む理性と本能、
「平氏の棟梁」と「もののけの血を引く者」の表情の変化が、
このお話の重要なアイコンとなっているから。


それでは、お話が展開していった順に見ていきましょう。

今回、視聴者の多くが感じたのは、
「清盛って、なんか急にずる賢くなってない?」
じゃないかと思うのです。

平氏の態度を明らかにせず、戦後の褒賞をうかがうとの
台詞にも、それは感じられましたね。


これについてわたしは、理性の「平氏の棟梁」を全面に
出したのは、裏に潜む「もののけ血を引く者」の本能を
際だたせるためであると読んでいます。

その清盛の「もののけの血」を騒がせた張本人が、
後白河帝です。

信西の仲介で、後白河帝と清盛が対面するシーンが
ありましたね。


これ、保元の乱だけでなく、これから何十年と続く
「清盛と後白河帝の戦い」を暗示させる、
とても重要なシーンです。


では、「ともに白河院の血を引く」二人のやりとりを、
台詞を抜き出して見てみましょう。
(赤文字は清盛の台詞)


「平清盛。」


「『災いをもたらす者』と言われ、父である白河院に命を狙われ、
母を殺された。」



「何を仰せになりたいのでござ…」



「そして、平忠盛にもらわれた。」

「忠盛は、平氏の家格を武家では抜ん出るところまで
高め、正四位上まで昇ったが、公卿になる事かなわず。」

「そちを棟梁と定めて死んだ。」

「忠盛の遺した意志など、かなわぬぞ。」

「どれだけ答えを先延ばしにし、どれだけ恩賞をつり上げ、
どちらについたところで行き着く先は同じじゃ。」

「たとえ勝ってもそちの思い通りになどならぬ。」

「朝廷の番犬としてこき使われたまま志半ばで死んで
ゆくのじゃ。」

「忠盛と同じようにな。」

「分かったか、清盛。」





この清盛と後白河帝のやりとりは、第2回「無頼の高平太」での、
清盛が白河院本人から院の落胤であることを明かされたシーンを
彷彿とさせます。

とくに、後白河帝の最後の台詞、「分かったか、清盛。」

白河院が清盛に圧倒的な力の差を見せつけ、清盛に
「面白うない世を変える」ことを決意させた、象徴的な
台詞ですね。

この台詞を聞いたときの清盛の表情に注目です。


一瞬だけ、忌々しいと思うような、思い出したくない過去を
思い出したかのような、怒りの表情になるんですね。


この表情、清盛の「もののけ」の本能を表すアイコンとして
機能しているのです。


そして、帝が清盛に投げつけたさいころ。

「これは俺とお前の勝負だ」という後白河帝の宣戦布告ですね。

対する、清盛の返し「平氏は、必ず勝ってみせまする。」


主語が「平氏」になっている点に注目です。


清盛は、「平氏の棟梁として」後白河帝の挑戦を受ける、ということ。

それを聞いた後白河帝の、どこか「一本取られた」というような、
はたまた、これから繰り広げられるであろう清盛との勝負を
楽しむような笑いも、印象的ですね。


そして、平氏一門に後白河帝の側につくことを告げる清盛。
ここでの清盛の台詞にもまた、注目です。




「されど、俺はそのとき悟ったのだ。」

「あのお方は…帝は俺をあおりながら、
俺に昇ってこいと仰せなのだと。」

「ご自分と互角に渡り合えるところに
昇ってきてみよと。」


ここで、なぜ後白河帝がわざわざ清盛の生い立ちを
話題にしたのか、その意味に気づき、わたしたち視聴者は、
ざわっとするような見事な演出に驚愕するのです。


つまり

「帝は俺をあおりながら、俺に昇ってこいと仰せなのだ」
とは、後白河帝との勝負であると同時に、清盛に流れる
「もののけの血」との戦いでもある。

「帝」には、亡き父・白河院も含まれているのです。


清盛は、「もののけの血を引く者」として、
この勝負に受けてしまっては、負ける。


忠盛の志である、「武士の世」をつくるために、
「平氏の棟梁として」この試練に戦って勝つことこそ、
真の勝利である。


これこそが、「平氏の棟梁としての」清盛の
返答なのです。

さらに、清盛のもののけの血をざわつかせる出来事が、
このあとにも起こります。


それは、「忠正叔父の離反」ですね。

家貞から、
「もとより、忠正様のお心の軸は、平氏を守ることにござりまする」
と聞かされたときの清盛の表情。

忠正叔父のことづてを伝える頼盛を睨みつけるときなど、
まさに父・白河院のごとき表情をしていましたよね。

もののけの本能と、平氏の棟梁としての理性の葛藤。

拳を振り上げ、やりきれない思いを地面に叩きつける清盛に、
じつによく表現されています。

手で顔を隠すことで本能と理性が葛藤していることを表し、
覆っていた手を下ろしたときに見せた冷静な表情。


このときの表情こそ、清盛がこの戦を「平氏の棟梁として」
戦うことを決めたという象徴なのです。


このタイミングで流れる「タルカス」が、じつに見事!


身内の離反という悲壮感で打ちのめされた視聴者に、
颯爽と流れるタルカスが、「いよいよ戦がはじまる!」という
興奮を与え、武士と同じ「武者震い」をさせるのです。


意を決した平氏の棟梁・清盛と、源氏の嫡男・義朝の邂逅も、
戦を前にした両者の「前夜の決断」の答えをじつによく
表現していましたね。

いよいよ来週、決戦の時。

ワクワクすると同時に、敗者になることを運命づけられた
かつての仲間たちの悲劇を思うと、複雑な思いです。


次回、第21回「保元の乱」にご期待ください!

さて、このレビューを読み終わったあなたは、
「また一大河は出し惜しみかよ」とお思いでしょう^^;

おっしゃるとおりにございます。

次回のレビューは、今回の放送で多くの視聴者の胸を打った、
平氏、源氏、袂を分かちざるを得なかったそれぞれの決断に
ついてのレビューをお送りします。

なんか、このままだと2回レビューが板につきそうですが、
それだけ、この『平清盛』が素晴らしい作品であるという
ことですね。

それでは、明日の更新をお楽しみに!

関連記事:
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